「これ、切り絵なんですか?・・・」
「そうです、これもあれもそれも切り絵なんです・・・」
「・・・・・これらのかっこいい写真は誰が?」
「作家の長屋先生ご自身が撮られたものです。」
「・・・・・それで、本のために僕が撮ると・・・」
「そうなんです・・・何とかなりましょうか?」
「何とかするしかありませんね・・・」
「写真にかかっているんです」
「・・・・・・・」
「作品はどれもたいへんデリケートなもので、作品によってはウん百万、いや、もうヒトケタの値が付くものも・・・」
「それらの作品、僕のスタジオに持って来られるわけですか・・・」
「そうです・・・本の出来は写真にかかっています・・・」
「・・・・・とにかく、僕らは撮影中に作品に触れないようにしましょう。」
「そうしましょう・・・で、何とかなりましょうか?」
「何とかするしかありませんね・・・」
「写真にかかっているんです」
「・・・・・・・」
この春、切り絵作家長屋明先生の『奇跡の切り絵』作品の撮影をさせていただきました。
撮影前の打ち合わせの段階では、編集者Kさんとの上の会話のようにちょっと、いや、かなり神経質な仕事となることを予想していました。実際に作品を目の当たりにして感じたことは、髪の毛ほどの細い紙の線で織り成す『長屋ワールド』がまさに ”奇跡の” 切り絵作品の数々であるということ。屏風のような大作から手の上に乗るような小作品まで、全て ”切り師 長屋明” が普通のカッターナイフ1本で創り出した切り絵の世界だったのです。
当社スタジオの入るたまプラーザ駅前のビルの屋上で撮影
「これがほんとのスカイツリー」
出版のためのアート作品撮影で、作品ごとにライティングを変えて撮ったのは今回が初めて。
神経質な現場を予想したと書きましたが、実際は今までにない本当に楽しい撮影現場となりました。
もちろん、長屋先生の繊細な作品に触れないよう神経を使い、「切り絵作品ゆえに写真は影が勝負!」の心持ちで対峙したため撮影の次の日は左手がつるほど体力も使いましたが、長屋先生所属の事務所社長Yさまと同社の美人コーディネーターNさまの存在がそんな疲れをぶっ飛ばしてくださった。Nさんが「松岡さんの腕、やばい~!」と言ってくださると疲れが吹っ飛び、撮影中、いつも最適なタイミングで最大のアシストをしてくださったY社長が「レフ板、いりますか?」と突っ込んでくださるだけで元気が出た松岡。打ち合わせの段階では心配ばかりされていた編集者Kさんも次第に本領発揮されていたのは、ひとえにお二人のありえない現場力のおかげでした。(遊びで撮った写真出しちゃおっと!)
イベントの司会などもされる多才な社長よしだもみじさんの本業は和太鼓奏者
Nさんの雰囲気作りに感謝!その笑顔に、その存在に感謝!
撮影初日、「この作品(写楽)を最初に撮ってください。撮影の後、間に合うのなら今日の便でイタリアに送りたい。」と社長。僕のスタジオから直接ミラノの美術館に向かった『写楽』でした。
この本の企画は今、入稿前の第4コーナーを回った段階です。
編集のKさんが奮闘されています。
6月には日貿出版社から出版される予定です。
本屋さんに並んだら、どうぞみなさま手にとって『切り師長屋明の奇跡の切り絵』の世界に触れてください。
ところで、撮り師松岡伸一は『奇跡の写真』を撮れたのだろーか・・・